〔少女庭国〕/矢部嵩 感想

 

〔少女庭国〕/矢部嵩

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無限回試行のいいとこどりが読める。これだけで十二分に価値があると思わないか?試行されているのは人の心のない実験のようななにかなのだが……。

デスゲームにしては穴だらけな仕様をハックした少女たちが文明を興亡させるさまが本当に面白い。まあそもそもデスゲームですらないというのがいやらしい。アンチ・デスゲーム小説らしい。

人殺しをしたくなかったが結局はそうして部屋を出た子と、もはや何人殺そうが出られない子で強烈な対比にしているのがいい。

無限回の試行があり、無限の少女たちの生があり、そして未来への献身があり、ようやく成り立った庭国。良いものっぽく書かれているものの、結局は脱出不可能で、何千もの少女を食い物にしなければ維持すらできない、つまるところは初期状態より状況の悪化した牢獄じゃんという告発によって見方が反転するのが気持ちいい。

あと反省会という言葉が変な残り方してるのが気持ち悪くてよかった。意味がねじ曲がって残るのはキモい。